内観体験記 31歳男性

【研修参加のきっかけ】

内観研修を受けた理由は、私自身、鬱病で仕事を半年近く休職しており、心療内科での治療を続けていたものの、なかなか治らずやきもきしていた時に内観のことを知り、打開策にならないかと思ったからです。

研修前は自分なりにインターネットを通じて調べたものの、「イマイチ理屈がよくわからない、本当に自分に変化が起こるのか?」という半信半疑の気持ちで広島に向かいました。

【研修1日目】

夜行バスで広島に向かったので、朝9時に待ち合わせの大野浦駅に到着。
そこから船江さんとご両親に研修所のある宮島に連れて行っていただきました。

いざ、その場に着くと、「ここで10日間も過ごせるのか?」という不安があったものの、島である以上、1人で脱出は不可能と思い、踏ん切りがつきました。

研修前に、まずは内観とはどういうものかということや、10日間のザックリとした日程についてご説明いただきました。
最初のお話で、「内観は理論では説明できない、実際に身をもってやってみる以外、わからない」と聞いたときは、自分が変われるのかという不安が余計大きくなりましたが、「実際に内観をすすめる以外のことは、幾ら考えても無駄である」と教えられ、とりあえずは悩むのをやめようと思いました。

その後、ちょうど正午近くだったのでお昼ご飯をいただきました。
どんな食事が出るのかと思ってましたが、自分の予想に反して、野菜中心の健康的なもので、すごく美味しく、良い意味で裏切られました。

その後、さっそく内観を開始しました。

最初は「母親」に対しての「してくれたこと」「して返したこと」「迷惑をかけたこと」を、幼少の頃から調べましたが、意外に記憶が鮮明に残っており、船江さんから上手くできてるとのお言葉を貰ったものの、自分自身は当たり前のことながら、新たな理解といった面での収穫はゼロでした。

【研修2、3日目】

2日目は初日の疲れから遅めの起床となってしまいました。
そしてこの日は断食の開始と洗腸の実施を行いました。
空腹感はなんとか我慢できたものの、洗腸で2リットルの食塩水を飲んだことが想像以上に苦しく、その後の軽い下痢状態と、夕方くらいから頭痛も起こり途中で寝てしまったりで、集中的な内観はできませんでした。

翌日も軽くお腹を壊した状態が残ってましたが、約48時間ぶりの食事をいただき少し元気に。

午後からは養育費について計算しました。
気持ち少なめに見積もったにも関わらず、大変な金額が算出され驚かされました。

この頃から、母親の本当の苦労が初めて理解できるようになり、当たり前だと思っていたことが本当に感謝すべきことだったと気づきました。
自分に対して、どれだけ大変な思いをして育ててくれたのか、また、それに対して自分自身はほとんどお返しをしていなかったことにも。
そして、徐々に、これは母親に限ったことではないとの理解が生じてきました。

【研修4、5日目】

この間は、自分の病気が原因で距離を置くこととなってしまっていた友人と、母親に対しての2回目の内観を行いました。

友人に対しては、内観をするごとに申し訳ない気持ちが積もっていきました。
お互い悩み相談や愚痴を聞きあってた仲であったのに、振り返ると圧倒的に自分の方がしてもらっていることが多いことに気づく発見がありました。

母親に対しては、今度は「してくれたこと」「して返したこと」「迷惑をかけたこと」について各々その時の自分の気持ちと母親の気持ちを考えながら内観しましたが、エピソードはいくつも出てきているのですが、どうも客観的な視点で行うことが上手くできませんでした。

やはり申し訳ない気持ちが先行してしまい、なんとなくモヤモヤするのと、このまま終わるのかという不安が出てきてました。

【研修6、7、8日目】

6日目から「嘘と盗み」について調べました。
心当たりだけでも沢山あるので紙に箇条書きしていきましたが、数枚になるほどでした。

「できる限り隠さず全てを話した方が効果は強い」と言われていたので、思い出したことは全て包み隠さず打ち明けましたが、自分の愚かさや恥ずかしさはもちろん、一歩間違えたら人生終わってる行動までしていました。
そんな時に、ふと気になった出来事について内観をしてみたら、今までになかった一つの大きな自分の勘違いに気づきました。
今まで悪事であってもどこかで自分を正当化していたこと。
その結果、自分のこれまで取ってきた行動が自らを鬱状態に陥れていたこと、嘘をつくことで何のメリットも生まれない、むしろチャンスを無駄にしていること、そして時間をも無駄にしていたことなど、次々と気づき始めました。
ここに来て、やっと内観のすごさを理解できました。

【研修最終日】

今までの一番の問題であった父親について調べました。
乗り越えられなくて苦しんだ大きなヤマでした。

最初は母親の時と同様にうまく思い出しながら自分のお世話になたことを挙げられたのですが、後半になるにつれて客観的に見られなくなってしまう状態になりました。

どうしても解決できなく、船江さんに相談しましたところ、最初は「難しい問題であってもほんの少しでも見つけなくてはならない」と私にとっては厳しいお言葉をもらいましたが、どうしてもできなく、ここで断念。

父と自分との関係がどのようなものであったのかの事情を、内観という形を離れて船江さんに聞いてもらったところ、すごく難しいケースだと言われ、「少なくとも強い怒りや恨みは解消できている現状を良しとすることで問題ないのでは」と言われ、私の集中内観は終わりました。

【感想】

まず、最後までやり通す事ができたことは、何よりも船江さんが全力でサポートしてくれたおかげだと感謝したいです。

内観をしたことについては、最初に言われた「やってみるしかない。できるかどうかを考えるだけ無駄です」ということが全てを物語っていたと、最後にはすごく納得しました。

今回の研修で気づいたことは沢山ありました。

しかし、それを生かすことができるかが重要であり、やったことは決して無駄にはならないが、その内観という「ものの見方」を日常生活に定着させなければ意味がないし、せっかくの習得も衰えてしまう(せっかくの道具も錆付いてしまう)ということも教えてもらいました。

また、身体的な面でも、美味しい野菜を使った料理を出していただき、食べ物に対しての感謝をすることや少量であっても満腹になるということなど、様々な勉強をさせてもらいました。

これら全てに言えることは、持続することだと肝に銘じてこれからの残りの人生を楽しいものにしていきたいと思います。

【現実に帰ってから】

内観の研修を終えて、家に帰る途中に気づいたこととして、周りがやたら慌しいなぁと感じました。
おそらく、自分が物事を冷静に見れるようになったのかもしれません。

戻ってからまだ数日ですが、周りの人達に対する見方において、良い意味で優しく見れている気もします。
些細なことでイライラしてたことが、許すことができるようになりました。

また、連絡を取りづらくなっていた友人に対しても、自分の気持ちや内観で気づいたことなどを話して、無事に以前のような仲の良い関係に戻ることができました。

そして、過去に囚われていたのが嘘のように、今を一生懸命生きることを念頭に生活ができるようになりました。