研修を受ける前は無気力で、やるべきことにも上手く取り組めず、起きている時間の九割は「休みたい」と感じながら生活していました。
過去に、ネグレクトを受けていた時期や性暴力を受けた経験があり、それからもう二十年以上経っているのに、未だに母への怒りを感じ、過去に囚われている自分自身を責めることが止められませんでした。
このままでは、普通に日常の延長で死ぬことを選択してしまいそうだったので、自分に何が起こっていて、何が満たされれば生きようと思えるのか、を知る必要があると思いました。
私個人を、客観的に辛抱強く、そしてメンタル・肉体のどちらかに偏らず包括的に見てくれる人を探したところ、こちらの研修所にたどり着きました。
申し込むにあたり、「各コースの説明」を読んだうえで、これまで家族の問題に悩まされてきた自分に必要なのは内観コースに違いないと思い、内観コースを希望しました。
その上で、研修初日の霊基さんとの最初の面談のなかで、改めて、どのような優先順位で研修を進めていくのがベストなのか、話し合いをしました。
「現在感じている色々な問題の根が、家族問題などの過去にある」との前提は、おそらく間違いではないだろうけれども、慢性的な疲労感を抱えている状態を考えると、瞑想やボディーワークというアプローチも合っているのかもしれない、という思いも持ちつつ、まずは内観コースからスタートすることに決まりました。
【内観】
内観は無自覚の自己正当化に気づくことに大きな意味があると理解していますが、一日半を内観に費やしてみた結果、私の場合は全体を通して「必要以上に自分を責める傾向が強い」ことが分かりました。
「自分を抑制し相手の都合を優先する癖のせいで、自分の感覚・感情との間に壁があるのでは? 」とのご指摘が、
「気力が無いから無気力なのではなく、あるはずの気力が見当たらない」という、これまで感じてきた自覚症状と合致し、腑に落ちました。
そこから後は、瞑想・ボディワークを通して、自分の感覚・感情を認識し、まずは自分のカラダとココロの声を聞けるよう努めました。
私が経験した一日半の内観は、本来の内観が持つ意義のほんの一部分だったと思いますが、私にとっては、とても価値のある時間でした。
自分が人生の主導権を何とか取り戻そうと必死であがいてきた経緯を改めて自覚することができたし、自分が望む時に、望む人から、十分な愛情は受けられなかったかもしれないけれど、色んな人から大切にされてきたことを思い出し、憑き物が落ちたような気がしました。
【瞑想、ボディワーク】
話し合いの上、納得して瞑想とボディーワークに取り組むことになったものの、初心者の私には、瞑想によって自分の感情・感覚が認識できるようになったとして、どのようなメカニズムで無気力に作用するのか分かりませんでした。
「感情・感覚=気力」ではないのでは? と疑問で、誰かの為に使える能力や体力がつくとも思えず、そこに時間を費やして大丈夫なのか、と不安はありました。
しかし、課題に取り組みながら霊基さんより、禅・ヴィパッサナー瞑想とは何なのか、その効果とは、など説明を聞いているうちに、今の私にとって瞑想は自分と信頼関係を築くために必要なことなのかもしれない、と思うようになりました。
私が心の底から信頼できる人とは、優秀であったりお金持ちの人ではなく、自分を深く理解し寄り添おうとしてくれる人だと気づき、私が「自分はいま何をして、どこでどんな風に感じているのか」を明確に捉えることは私自身への信頼となり、その自信は気力を生み元気になっていく、そんな自分を発見しました。
今までは誰とどこで何をしていようと、「自分がそこにいて本当に大丈夫なんだろうか」と漠然とした焦燥感があり、そこから逃れたくて、「とてつもなく一人きりになりたい、でも寂しくて一人にはなれない」、そんな思いで引き裂かれるような感覚と共に生きてきましたが、静かに、深く集中できている瞬間を何度か味わい、その間は許されているような気がしました。
その結果、最後の数日間は特に無防備で無邪気な人間に変化していったように思います。
これは宮島の自然が美しかったのも大きいですが、鹿や猪、猿に蛇にと様々な動物と出会い、たくさんの蛍も目撃して年甲斐もなくはしゃいでしまいました。
霊基さんにも色々とお世話になっているにもかかわらず、口を開けば「お腹がすきました」と子供のように報告していたように思います。
【ボディーワーク】
お腹などの縮こまって硬くなった筋肉を緩め、腕や大腿骨など関節に埋まった骨を出していく動作に加えて、歩行瞑想時にドローイングを維持して筋肉を締めていきました。
各関節の一番無理なく無駄なく楽な体の動かし方を教えていただき(普段の自分の動きが不自然なのか)気づきがたくさんありました。
研修が終わってからも自分でできる、筋肉を緩める方法や気をつけるべき動作などを教えてもらいました。
今回の研修を通して簡単にまとめると、すごい元気になりました。
過去の自分と決別する為の卒業式のような、これからの人生に立ち向かっていく為の壮行会のような八日間でした。
費やした時間は、誰かの為でなく、自分の為になる能力をつける訓練になったし、自分を疲れさせない頭や身体の使い方は、普通に体力をつけるよりも貴重なものでした。
携帯を触らないこと、思ったように入浴ができないこと、生理と重なってしまったこと、色々とあった小さな心配事は何事も問題なく研修を終えることができました。
霊基さん、たくさんの気づきを与えていただき、自分と向き合う私を温かく見守っていただき、本当にありがとうございました。