* この体験記は、屋久島時代のものであり、現在(広島県 宮島)とは、設備・環境等に違いがあります
素晴らしい環境で、10日間の内観研修を受けさせていただき、本当にありがとうございました。
身体の痛み、記憶を思い起こせない苦痛から静かに座り続けるということがなかなか出来ず、もしこの環境でなければ、途中で放棄していたと思います。
曲がりなりにも内観の入り口に立つことが出来たのは、そんな私でも暖かく見守ってくださった霊基さんと、研修所の素晴らしい環境があったらであったと思います。
本当にありがとうございました。
私が霊基さんと研修所のことを知ったのは、クリシュナムルティ関連のホームページを調べている時でした。
クリシュナムルティの考えに触れて3年。
ようやくその内容を理解し始めた気になっていた私は、その考えに少しでも近づきたいと、自身を探求する意味で実践できるものを探していました。
内観研修は、その手始めとして打ってつけだと思ったのです。
屋久島に到着したのは大雨の中、本当は飛行機で向かうはずが欠航になり、急遽鹿児島から船で2時間をかけて屋久島へとたどり着きました。
霊基さんの車で到着した研修所は、屋久杉をふんだんに使った香りの豊かな素晴らしい一軒家。
研修所はその二階。板間と畳の二間があり、それぞれとても大きくゆったりとした環境です。
しかも窓からは木越に海が見えます。
正直、このような恵まれた環境は想像していなかったので、ちょっと驚きました。
しかし、もっと面食らったのは、洗腸そして断食という課程を経て、あとは朝の4時から夜の出来るところまでひたすらに内観し続けるというその内容でした。
もちろん事前にホームページの説明を一通り読んではいましたし、そういった研修であるという理解はして臨んだつもりであったのですが、前日まで仕事に没頭していた私は、どこか緩い気持ちで研修所まで来てしまったということに、その時ようやく気づきました。
翌日から洗腸、そして断食、そして起きている時間はひたすらに内観という日々が始まりました。
最初の2~3日間は眠気が厳しいというお話の通り、また私の場合は日頃の不規則な生活が祟ってか、朝早く起きることは出来ても、8時頃になると猛烈に眠くなりました。
また、背中に慢性的な痛みがあり、それが同じ姿勢で座っていると辛くなってくるので、頻繁に姿勢を変えてしまいます。それが集中力を維持する障害にもなりました。
しかし何よりも大変だったのは、内観の基本である過去の記憶を出来るだけ具体的に、克明に思い出すことでした。
私は以前から、過去の記憶が薄いという自覚がありました。
また、7年ほど前に鬱病のような状態になり、死ぬことを真剣に考えたり記憶を無くしたいと苦悶したことがあります。
そういったことがあって記憶が曖昧なのかな~と漠然と考えてはおりました。
しかし食事にこれほど気を遣い、環境的にここまで整っている状態で思い出そうと集中しても、ここまで記憶が呼び起こせないという状態は、とてもショックだったし本当に苦しかった。
私の場合、大まかなあったことは朧気に思い出せるものの、その思い出せる事実自体が少ない上に、その明確な時期や具体的な会話などはほとんど思い出すことが出来ない状態でした。
それでも、何とか集中して取り組んでいる内に、少しずつですが思い出す事実の数は増えていきました。
ただ、その内容の具体性は乏しく、本当に少しの記憶をつなぎ合わせて内観していくというような感じで、本来は終わり3日間が集中力も高まり、内観の本番だと言われますが、私は研修が終わりに近づくにつれて逆に、内観そのものに疲れ果ててしまった感がありました。
それでも内観を始めて6日目には、母や父からいただいた愛情の大きさ、私がいかに自分の為だけに生きてきたかを心から実感することができ、その罪深さに涙が出ました。
また妻に対して私がしてきた心ない事実。
妻を泣かせても、それを他人事のように見ていた自分。
また自分を飾る言葉が、その時は思いもよらなかった現象となって現れていることに気付かされ、その恐ろしさに呆然としました。
私に起きていることは、全て私に原因があると言って良いくらい、私の心から生まれているのだという事実を僅かながら見ました。
「今」に集中する力があれば、もっと自分の内観に深く入ることができ、もっともっと深いところで気づきが生まれ、深い実感・共感と共に、何か私にとって未知のものに触れることができたのかも知れません。
それを思うと残念な気持ちはとても強いです。
それでも、今まで気づきも気づこうともしなかった、父母をはじめとする私と関わって下さった人たちの優しさ、そして愛情。いかに私が自分の為だけの言動でもって生きてきたのか。また自分の嘘から出た言葉によってどれだけの関係を傷つけ、実際に壊してきてしまったのか。そういった普通に生活している中で目を逸らしてしまっていた過去の過ち、罪に気づきました。
それによって、私の一方的な思い込みや思い上がり。劣等感を覆っていた、しょうもない優越感などの不要なものを、不要なものとして片付けようという気持ちになれたことは、私にとって良い収穫だったと思います。
9日目の夜、それまでずうっと降り続いていた長い雨があがり、満月が出ていました。
翌日最終日の昼までの内観を予定していましたが、私の心は疲れ果てて沈黙してしまい、記憶がそれ以上鮮明になることも、また記憶から何も感じることも出来なくなり、残念な気持ちを抱えながら内観をすることをあきらめました。
夜の11時を過ぎていましたが、内観を止めると言った私を遅い時間にも関わらず温泉に連れて行ってくれた霊基さんには本当に感謝しています。
あの満月を眺めながら入った温泉の心地よさで、疲れた心を癒すことが出来ました。
翌日は快晴で、涼やかな空気の中で歩いたヤクスギランドも本当に気持ちよかったです。
きっとまた屋久島には行くと思います。
身体や集中力などの改善するところは改善して、いずれまた内観研修には挑戦してみたいと思っています。
あと、玄米菜食を中心としたお食事、本当に美味しかった。あれはお店を出せるくらいのものだと思いますよ。
最後に、霊基さん、この度は本当にありがとうございました。