苦労をしなさい。
少なくとも避けようとしなさんな。
人間は、苦労によって幅と厚みとができるからです。
凡人は、自分だけが苦しんでいると思っているから「やり切れぬ」と思うのです。
ところが、こうした苦労は、過去にも必ずや経験した人があり、現在もまた経験しつつある人があり、将来も尚経験する人があるものです。
人間も、この辺のことが分かってくれば、わが苦しみから他人の苦しみを想う慈悲心が生まれてくる。
そして、苦しみのあるときは「自分をおめでたくしない為の神の恵みだ」と思えるようになるのです。
森信三 『訓言集』より