時間

われわれの運命は非現実的であるがゆえに恐ろしいのではない。
逆行できず、鉄のように仮借ないがゆえに恐ろしいのだ。

時間はわたしを作り上げている実体である。

時間はわたしを押し流す川である。しかし、わたしはその川である。

それはわたしを引き裂く虎である。しかし、わたしはその虎である。

それはわたしを焼き尽くす火である。しかし、わたしはその火である。

世界は不幸にして現実である。わたしは不幸にしてボルヘスである。

『時間に関する新たな反駁』 J・L・ボルへス