原発もあの戦争も、「負けるまで」メディアも庶民も賛成だった?
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110802/221831/?leaf_rcmd
以下、一部引用
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話はちょっとずれますけれど、マスコミの問題で私が連想するのが、殺人事件報道の多さです。国内における殺人事件の発生件数は戦後どんどん減って、いまや史上最低だったはず。なのに、マスコミの報道はむしろ増えている感じがする。すると奇妙なことに、日本は昔より物騒で殺人ばかりが起きている国に思えてきてしまうんですね。
池上:2010年の殺人事件発生件数は1067件。戦後最小記録を2年続けて更新しました。いまの日本は、殺人件数から見ると、世界に冠たる平和な国で、自身の歴史のなかでもおそらく最も殺人が少ない社会です。
加藤:ところが、一般の人はそう思っていない。マスコミで毎日のように殺人事件を報道しているからです。テレビを見て新聞を読んでいると、1日3件くらいずつ、新しい殺人事件を目にする。極端に言うと、テレビと新聞によって、全国津々浦々の人が日本で起きている殺人事件を知っていることになる。国民の安全感が刺激され過ぎていますね。世の中が殺人鬼で溢れているように感じてしまう。報道のマジックです。
池上:1980年頃、NHKで私は警視庁捜査一課担当、つまり殺人事件専門の記者だったことがあります。当時は、特殊な例を除き、殺人事件はローカルニュースにしかなりませんでした。2、3人まとめて殺されるような事件でない限り、全国ニュースにはまずなりませんでした。北海道で起きた殺人事件は北海道のローカルニュースでおしまいだったわけです。
加藤:なぜ、事件数は減っているのに殺人報道は増えているんでしょう?
池上:殺人事件の取材報道がマスコミにとって一番楽だからです。現在、民放を中心に、ニュース番組の時間枠がどんどん拡大しています。芸能人を起用したコストのかかる番組の代わりに、予算のわりに視聴率が見込める、という理由からです。
でも、報道記者やニュースに強いディレクターが増えるわけではない。そんなとき、殺人事件報道ほど、注目を集めやすく、かつ取材が楽なものはない。事件の概要は警察が全部発表してくれるし、容疑者や被害者の写真も貰える。カメラマンを現場に出せば、とりあえず現場の映像が撮れる。マイクを向ければ、近所の人は「怖いですね」と言ってくれる。あっという間に5~6分の報道が一丁上がり、なんですよ。
加藤:しかもその報道によって一般の人たちには「怖い」という感情が植え付けられる。警察にとっても好都合。予算が多く取れる材料になる――。