デネットの考えでは、私たちが他者の心を了解することができるのは人間の志向姿勢(intentional stance)がうみだすユーザー・イリュージョンによるものである。
進化のプロセスを経て形成されたこの志向姿勢は、しかし、意志を持たないランダムな対象に対しても、志向姿勢を投影することでそこに他者の心を読み取ってしまう(心理学者バラス・スキナーによる鳩の実験を参照)。
志向的対象を形成するこの効果のおかげで私たちは、シャーロック・ホームズのように実在しない架空の人物に対してもあたかも彼が実在したように振舞うことができる。
この志向姿勢が、制御不可能な対象である自然現象に対して投影されたときに発生する副産物が、神という概念なのではないだろうかとデネットは推論する。