身体イメージ障害(BID)について

人間(ヒト)と云う生き物(心身統合的実体)において、心(意識)がカラダ(身体)を制御する(インテンションが出る)際に、身体イメージ(運動イメージ)と云うものを介在して運動が行われている。

これは、身体感覚(実感)と身体概念(メンタルイメージ)が混ざり合ったような、脳が持つ身体について表象(イメージ)であり、

アレクサンダー・テクニークから派生したボディマップ理論では、身体そのもの(現地)とボディマップ(身体の地図)、「現地」と「地図」と云う言い方をしますが、それに近い概念です。

ただ、地図と云うと、印刷された動かない「絵」と云う感じがしますが、実際には、その絵(地図)が時間軸のなかで刻々と動いており、(それは、電光掲示板や液晶画面をまじかで見ると点の変化でしかないのに似ています。点の連続が線となるが如く)

三次元的な(立、横、高さの)地図に、時間軸での変化を加えた場合、「運動イメージ(運動表象)」と云う言葉が適当となります。

ですので、以下の話では、「身体イメージ」と「運動イメージ」の二つの言葉は同義のものとして扱います。

「身体障害」とは、物理的な身体の障害ですが、物理的な身体そのものには障害は無いにも関わらず、その身体を動かし制御する、脳が持つ身体表象(身体イメージ)に障害があるため、上手く身体を使えないで、カラダに慢性的な違和感、故障などが出ている状態が、「身体イメージ障害(BID)」です。

この概念は、わたし自身が若い頃から抱えていた不可解な身体的問題を理解し解決しようとする試みのなかで徐々に固まってきたもので、自身がこれまで取り組んできたフェルデンクライス・メソッドにはじまる様々な身体開発技法はすべて、その問題を、どうにか解決しようとしてのものでした。

現在は、刀禅と云う身体開発のプログラムに、最終的な「身体イメージ障害(BID)」解決のヒントを得ています。

私にとって刀禅の練功は、武術の稽古と云うよりも、まず何よりも非常に緻密な身体の調整法(チューニング法、調律法)であり、それは、つまるところ、自分の積年の問題である「身体イメージ障害(BID)」の現時点で最高の治療法である、と感じています。

これは、元々は、自身の抱える、ある種特殊な問題(障害)の解決のために始めるしかなかった探求(研究)だったのですが、最近思うに、程度問題はあれ(つまり、私ほど、その障害が重度な人は稀だとしても)、「自分の動きがぎこちない、不器用である、新しい動きをマスターするのに人より時間が掛かる、慢性的なカラダの痛み(腰痛や肩こりなど)があるけど、お医者さんに行ってもどこも悪くないと言われる、だけど、やっぱり自分のカラダの動きは何かがおかしい」など感じておられる方のなかには、どうやら軽度の身体イメージ障害を持っている方が存在しており、私が自分のために編み出してきたBID治療法が適用できるのではないか。

どうも、これまで思っていたよりも普遍的な話なのではないか、と感じてきており、これから少しずつ、理論と具体的な方法(技法)を整備していきたいと考えています。


マダラな身体イメージのむらを均質化する。
それは、厳密な基準を持った訓練体系だからできる。

気づきを注いだ部分は、ゆるみ、拡がり、長くなる。つまり、表面積が広がる。
その結果、痛みが軽減する。

そのかわり、体表面には限りがあるので、気づきの無い部分にしわ寄せがいき、身体は捻れる。

多くの慢性的な身体(運動)の失調症に、この身体イメージ障害と云う問題が関わっており、それを治療・修正することはできる。