当研修所の集中内観コースの特徴

このページでは、当研修所の集中内観コースの特徴を、内観原法に基本をおいて行われている全国の内観研修所の研修と比較するかたちで説明していきます。

内観原法とは、内観法創始者の吉本伊信師が、晩年に確立された集中内観研修のスタイルを指します。
現在では、伊信師の弟子の方々の主催される内観研修所で、原法に従った研修を受けることができます。

参考ページ
吉本伊信 – Wikipedia

まず最初に述べておきたい重要なことは、両者の方法論の具体的な違いは、「どちらが正しいか」「どちらが良いか」ではなく、それぞれが「何を狙いとして」「どこに焦点を当てて」研修をデザインしているかによるものだということです。

1. 日数について

原法では、基本は、日曜日午後~日曜日午前までの一週間となっています。

この一週間という長さの設定は非常に重要なもので、ある程度の内容を持った内観研修を行うのであれば、(特に初めての集中内観の場合)最低一週間の時間は必要だと考えてよいでしょう。

当研修所では、内観コースの基本の日数は、十日間にしております。

これは、一つには、長距離走に例えれば、出だしでうまくいかず遅れた場合、中盤、後半と頑張って取り戻したとしても、最後の一番調子の出たところで、「時間切れ・終了」となってしまい、残念な心残りのある結果となってしまうことを避けたいためです。

一週間の内観研修の場合、この点においては、ギリギリの日程を組んでいると言えるでしょう。

また、逆に、二週間の研修となると、まず、それだけのまとまった休みを取ることは、多くの方にとって困難であること、さらに、期間が長過ぎることによって、かえって中だるみや精神的な疲れが出て、緊張感を持続できないこと、などが挙げられます。

二つ目の理由として、順調に研修が進み、一週間目あたりで、「ここで終わってもいい」「一山越えた」と思えるだけの、精神的な気づき、所得を得ている場合です。

通常、集中内観研修において、自分の人生を変えてしまうだけの内容を持った、後に残る「気づき・自己理解・自己洞察」と言うのは、最後の一日、二日に「気づきのラッシュ」のような形で訪れますが、正味九日間の研修の場合、更に、そこからの二、三日間で、更なる内観の深み、気づきに至ることが期待できます。

これは、そう頻繁に一週間以上の時間を取って自分を観る期間など持てない私たちの多くにとって価値あることだと思います。

2. 面接の回数と起床就寝時刻について

原法では、朝5時起床、9時就寝で、面接の間隔・回数は、1時間半から3時間の間が多いと思います。

こちらでは、一度にお一人様しか受けないこともあり、起床・就寝は、研修者の方のその日の体調・集中力などを見て、やれる時から始め、やれる限り面接を続けます。研修終盤で、睡眠を削ってでも内観を進めたい、眠気がこない、と云う状況になれば、それに付き添い、夜中も面接に伺います。

また、面接の間隔は、通常、最大一時間以上開けることはしません。(基本は、45分間隔です)

それ以上の時間をとっても、集中力を持続させることが難しく、時間のロスが出る、と考えるからです。

ただし、研修後半で非常に集中が深まり、もっと時間をかけて調べたい、と云う状態になった場合には、その様子を見て、面接の回数・間隔を調整していきます。

ですので、こちらの内観研修の面接回数は、かなり多いものとなるとお考えください。

3. 食事の内容と食べ方について

まず、食事の回数について

原法は、朝・昼・晩の三回、

こちらでは、基本は、朝・昼、あるいは、昼・夜の二回となっています。
(研修者の方の必要と希望により、一日三食となる場合もあります。)

次に、食事の内容について

原法では、一言で言えば「肉・魚・野菜、和洋をバランスよく使った、普通のお母さんの作った家庭料理」。

こちらの研修所では、原則的に「肉・魚を使わない、玄米菜食。一般的な感覚からすれば、質素で、地味で、食材、調味料には気を使っている自然食」となります。(研修者の方の必要と希望により、できる限りでの対応はいたします)

それぞれの理由として、

原法は、そのスタイルが確立されたのは、日本が全体として、いまほど豊かでなかった時代であり、「充分に食べられず」「肉親の安全な保護」を受けてくることの少なかった過去を持つ内観研修者に、「安全に保護された空間で」「心のこもった豊かでおいしい食事を、充分に食べさせる」というスタイルが、良い方向で作用したのではないかと思われます。

それに対し、飽食の時代に生きている、食べ過ぎが常態となっている現代の内観者にとっては、
「いかに無駄な栄養を体に入れないか」「いかに身体のデトックス・毒抜きをして、透明感のある、冴えた意識状態を実現するか」と云うことが、課題となります。

その研修者の身体的状態の違いが、食事に関する方針の違いを生んでいると考えて頂いて良いでしょう。

最後に、食べ方について

原法では、一日三回の食事では、同時に内観に関する音声テープをかけて、それを聴きながら食事をします。

これは、とにかく、少しの時間も無駄にすることなく内観を続けさせると言う方針から、同時に二つのことを済ませ、食事が終わると即、内観の調べの続きに戻ることを狙ってのことでしょう。

こちらでは、食事のときにテープをかけることはしません。

食事のときは、食べることにいかに集中するか、どうしたらそれができるか、と云うことを指導し、「食べるときには、食べることに、とにかく全力で専念して」食べていただきます。

その理由として、一つには、テープを聴きながら食べると、気持ちがテープの内容に取られてしまって、上の空のながら食いで、食べてしまうこと。その結果、充分に噛まないこと、味わないこと、食べ過ぎることから、眠気の問題が出てきてしまうことです。

食べることに対する気づきがないと、どうしても満足感がないし、必要以上に食べ過ぎてしまいます。
それを防ぐためです。

二つ目として、食べるときに「食べる行為に完全に集中する、集中して食べる」ということを心掛け、訓練していくと、その集中力が、食事以外の時間にも働いて、内観中も、その時間の「対象・主題・テーマ」に完全に集中して調べる、ということができるようになってきます。これは、ヴィパッサナー瞑想で言えば、サマーディ(一点集中力)の訓練に相当するものです。

その、「今していることに対する、集中力と気づきの能力を高める」ことを狙ってのものです。

食とからだのアファーメーション

4. 断食・減食について

原法では、研修者の主体的・自主的な希望がある場合には、断食・減食が行われることがあります。
これは、主に宗教的苦行の意味合いで、研修者が自分自身を肉体的・精神的に追い込む(死を問いつめる)ことで、真剣な命がけの内観となることを目指して行われているものだと思います。

当研修所で行われる断食・減食は、主に、身体・精神を研ぎ澄まし、内観に適した心身の状態を作ることを目的として行われるもので、体内環境を整えていくためのものです。

断食は、通常、二日間程度(最大で三日間)、その後、何日か掛けて、少しずつ食事の量を戻していきます。

5. 音声資料の使用について

原法では、通常、一日三回、食事のときに、音声資料が流されます。

当研修所の場合、集中しての食事の後、しばらくして眠気が来た時間に、必要とあれば、音声資料や内観に関する資料・本を読んでいただくことがありますが、通算すれば、原法に従った研修所より、それらに充てている時間は少なかろうと思います。

また、音声資料等の使用は、必ず、ひとりひとりの方の、これまでの背景と状態を考え、一人用の再生機器を支度してのものとなります。