『ヨガの解剖学』

ヨガは本来、統合的な実践の文脈において行なわれるべきものであるのでしょうが、現在、断片化したかたちで流行っているように見えます。
ハタヨーガは、最も実践者が多いボディワークであると共に、
最も故障者の多いボディワークであるように思えます。
極めのポーズを作ることを重視して(目的指向)、そこまで行く運動の過程を軽視している(プロセス軽視)点、
言葉を変えれば「最大稼動範囲」を拡げることに目が向いて、
「最大使用範囲」(力の連動のある、使える範囲)の質をあげることにはあまり注意が向いていないように感じられます。
その結果、今まで使ってなかったからだのパーツの柔軟性(筋伸ばし)は進むのだけど、元々問題を持っていた、特に腰や首・肩の間違った(身体構造的に不適切な)使い方は修正されず、逆に、その間違いを強化して、痛めたりすることが多いように思われます。
この本は、ざっと眼を通した段階ですが、
それらの現在の国内のハタヨガも持つ問題に自覚的であるように思えます。
ヨガに真剣に取り組んでいる方にこそ、オススメしたいです。
また、動きのプロセスに重点を置いたヨガである(と理解しています)「胴体力」や、動きにおける気づきを重視するフェルデンクライス・メソッド(ATM)、外からの力(負荷)をかけることで、自身の身体の力の連動性・つながりをチェックすることができる刀禅の稽古などに触れてみることも、ヨガメインの方にオススメできます。
ヨガの解剖学: 中村尚人
◆ 補足
上で「プロセス軽視」「稼動域の拡大に目が向いている」と書いたのを見て、
真剣にヨガに取り組んでおられる方は反感(反論)を持たれたかも知れません。
ただ、私がこれまでに見たことのあるヨガ(DVDなど含む)は全て、力の連動が無いように見えます。
「力が繋がってないこと」の認識自体、力の繋がった感覚を実際に明らかに経験しない限りないですので、もし「自分たちのヨガは、それができている」と思われるのなら、ぜひ動画などを教えて欲しいです。
私自身、自分の動きが「力が繋がっておらず」「まったく使い物にならないのだ」と云うことは、胴体力、韓氏意拳、刀禅などに触れることで徐々に認識できてきたことで、それはかなりショックでした。そのショックは、現在でも稽古の度に感じさせられます。できている訳ではないです。
私は、本来(元々)ヨガは、そのような力のつながりを持って行なうべきものであり、力のつながりを明らかにさせるものであると認識しておりますので、今行なわれているヨガはおかしいんじゃないかな、と思っております。
まあ、つまり、「ヨガって本来、かなりスゴイ体系なんじゃないのかな」と思っていると云うことです。