上村秀雄 『歩むもの』より

世の中というものは正直なものだ。
ごまかして渡ろうなんて、不貞の考えを起こしても、どっこいそうは問屋がおろさない。
貸借対照表は神様がちゃんと作っておられることを忘れてはならない。
……
何がこの人生においてもっとも大切なものなのか。
それをしっかり見定めて、まっしぐらに邁進することだ。
つまらぬことに心身を労している間に、短い人生は、さっさと過ぎてしまうのだ。
……
私の、最大の、そして最後の強敵は、私であった。
……
忘恩の徒となるは易く、報恩の人たるは難し。
ああ、なんと、人は恩を忘れ易いことか、われ、人ともに―。
……
大志を抱く者は、つまらぬことでは他人と争わない。
たいていのことは負けておればよいのだ。
……
誰にも知られずに、何かよいことを、毎日続けてすること―己の人つくりの秘訣である。
……
相手の出方の如何を問わぬ愛こそ、ほんとうの愛である。
この愛を知ることに依って、人生の趣は深くなる。
……
こうして五体満足にそろって、無事に生きているということ….
これは何という素晴らしい、ありがたいことであろうか。


上村秀雄 『歩むもの』抜粋