「きちっと腰腹の中心に力をまとめたとき、私は忽然として全く自我を離脱して清浄悠久の涅槃境に入った。――幽かに小鳥の鳴く音が聞こえる。眼を上げると海、山、原、林・・一切が輝く。みんなこぼれるばかりに光を被っている。その美しさ――――オオ、完全な正中心(臍下丹田)を得た瞬間の、あの絶美な天地の姿はどうだ。なんという素晴らしい詩的神境だ。――宇宙神秘の至宝は各人の正中心に潜んでいる。無限の光明である。絶対の歓喜である。
――かつ目すれば・・オオ、なんと言う素晴らしい美しさだ。なんという神々しさだ。枝を差し伸べた青木は・・その平凡なありふれた木の枝までも、ゆらゆらと微風におののいて神々しく、――辺り一面に白紫光の宝石をちりばめた様に美しく輝いた」
「オオ、嬉しい。かたじけない。古の釈尊がかつ然として大悟徹底せられた時、天地の万象は燦然として光り輝いたというが・・・またソクラテスは3日間ギリシアの原野に佇立したまま瞑想を凝らし、東天微光を呈した時、忽として悟得し、欣喜雀躍したというが・・・乞う、私の不遜を寛恕せられよ。これ以上の美しさ、これ以上の嬉しさがあろうか。いや、これ以上の嬉しさが、この世の中にまたと有り得るだろうか。」
「もう沢山だ。受けきれぬ恩寵に、見も心も張り裂けそうだ。」
「敬愛する満天下の同胞諸君よ。願わくばおのおの諸君自身の正中心に帰れ。しかして全て備えられ、全て与えられたる大自然の懐に戻れ。心身健全の賜物のごときはいわずもがな、霊然たる天父の恩寵、御身の魂を抱擁せらるるの聖境を体得せらるるに至るだろう。」